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ピアース病(Pierce’s Disease)耐性のぶどう品種、2015年にも利用可能に 【アメリカ】 2013年12月25日


ピアース病(Pierce’s Disease:PD)は、1990年代末頃以降カリフォルニアで発生しているぶどうをはじめとする果樹類に感染する病気で、感染すると数年以内にぶどうが死滅する致命的な病気だ。

PDは、Xylella fastidiosaと呼ばれるバクテリアがぶどうの送水管にこぶをつくり、地中からの水分供給をさえぎることで、ぶどうを死に至らしめる。このバクテリアはglassy-winged sharpshooter (GWSS)と呼ばれるセミのような昆虫が媒介してぶどうに感染する。

PD(ピアース病)に対してはアメリカではこの10数年、多額の研究費用が投じられ、その対処法が研究されてきたが、これまでのところ有効な対処法は見つかっていなかった。それゆえPDは、ワイン史上最悪の病気と言われてきた。2000年代初頭には、あと10年でカリフォルニアのワイン産業は壊滅するとさえ言われた。

今回、University of California, Davis, Foundation Plant Services (FPS)は、そのピアース病(Pierce’s Disease)に耐性のあるぶどう品種を、2015年には商業的に利用できる可能性を発表した。

この研究は、PD耐性のぶどう品種を遺伝子操作ではなく、交配でつくりだしたところが注目される。

UC Davisのぶどう栽培学教授で、ぶどう交配の専門家であるAndy Walker博士は、PDに抵抗性を持つアメリカ原産のぶどう品種の研究を進め、アメリカ南西部とメキシコを原産とするVitis arizonica種とその配下のVitis arizonica/candicans種の中に、PdR1と名付けられたPDに強い耐性を持つ遺伝子を特定した。

博士らはそのVitis arizonicaとワイン用のヨーロッパ原産種Vitis vinifera(ヴィティス・ヴィニフェラ)の交配を重ね、最終的に第5世代の交配で、97パーセントヴィニフェラで、どの世代のぶどうもPD耐性のPdR1遺伝子を持つぶどう品種がつくられたことを確認した。

この研究には10年にわたる歳月が投じられ、その研究にはCalifornia Department of Food and Agriculture’s (CDFA) やPierce’s Disease/Glassy-winged Sharpshooter (GWSS) Boardの資金が提供された。

2010年以降、それら新しいPD耐性交配品種から造られたワインに対して、専門家によるテースティングが重ねられた。初期の87パーセントヴィニフェラ種では、まだアメリカ原産種の青臭い香りがあるとされ、ネガティブな評価だった。

その後の94パーセントヴィニフェラでは、前回のキャラクターは指摘されなかったが、まだいくつかのネガティブなキャラクターが指摘された。

しかしその後の97パーセントヴィニフェラではネガティブなコメントはなく、水準の高いヴィニフェラ種の個性を持つとされたという。また改良された最新の品種から造られた2013年ヴィンテージのワインでは、ナパ(Napa Valley)やサクラメント(Sacramento)などカリフォルニア全域のワイン生産者らによるテースティングでは、おおむね良好な反応が得られたという。

現在FPSでは、PD耐性の3種類の台木(rootstocks)に複数の種類のChardonnay、Zinfandel、Petite Sirah(プティット・シラー)、1種類のCabernet Sauvignon、1種類のCabernet Sauvignon x Carignane(カリニャン)の交配種を保有している。それらは94%と97%ヴィニフェラ種となっている。

これら交配によるPD耐性ぶどう品種は、規制による障害もほとんど見当たらず、2015年にも市場に投入できるのではないかと見られている。PD耐性ぶどう品種の投入により、ワイン生産者にはより多様な選択肢が与えられることになる。

関係者は、交配による品種改良が先に来たが、当然遺伝子操作によるPD耐性ぶどうの研究は進んでいる。早晩、有効な遺伝子操作手法が発表されるだろうが、遺伝子操作については様々なクリアしなければならない規制が存在し、実用までに10年はかかるだろうと見られている。また遺伝子操作ぶどうの導入については、消費者や生産者の理解が欠かせない。

現在ヨーロッパで拡大が進行しているFlavescence doréeと呼ばれるぶどうの病気も、ピアース病(Pierce’s Disease)と類似の対処策がない病気だ。PD対策のための交配研究が、Flavescence doréeの対策に役に立つかもしれない。


Flavescence doréeについては、下記の【関連ページ】内の
『ビオディナミのワイン生産者、殺虫剤不散布で訴追を受ける 【フランス】 2013年11月29日』をどうぞ。



【関連ページ】

ビオディナミのワイン生産者、殺虫剤不散布で訴追を受ける 【フランス】 2013年11月29日』

カビの病気に耐性のあるぶどう品種を開発 【スイス】 2013年4月22日』
遺伝子操作ワインに関してワイン生産者間で二分 【ニュージーランド】 2013年9月7日』
オーストラリアの研究者、病気耐性の遺伝子操作ぶどうを開発 【オーストラリア】 2011年10月31日』
ファンリーフウイルスに耐性のあるぶどうの開発 【ドイツ】 2009年7月10日
UC Davis 害虫に耐性のある台木を開発 【アメリカ】 2008年4月5日
コーネル大学、3つの新しいぶどう品種を発表 【アメリカ】 2006年7月21日』

オーガニックワイン考
遺伝子操作ワインの出現で思う




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