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ワインの栓をめぐる問題
 (その2)
     ワインの栓をめぐる問題 (その1) コルクテイント(ブショネ)の問題 に戻る
     


 ワインの栓をめぐる最近の動き(vol 1) ことの発端

     ワインの栓ーコルクかプラスチックか

ここ数年世界のワイン界ではワインの栓についてホットな論争が繰り広げられています。従来ワインの栓と言えば真っ先に思い浮かぶのはコルクの栓ですが、近年ワインの栓としてコルクを使うことが果たしていいかどうかということで、ワインの栓の製造業者、ワインメーカーから小売業者、消費者まで幅広い範囲でさまざまな議論を呼んでいます。


コルク論争の背景

コルク論争のひとつのきっかけとなったのは、1998年から1999年ごろイギリスでいくつかのスーパーマーケットチェーンがワインの栓としてコルクを使うことに対して問題提起をしたあたりだと思われます。このときの主張は環境、自然保護をメインに据えたものでした。マークスアンドスペンサー(Marks & Spencer)やセーフウェー(Safeway)は、毎年何十億個のワインコルクが作られ、それによって森林が伐採されていると主張したのです。

そこで彼らはコルクに替わって合成樹脂であるプラスチック栓の使用を推奨したのです。後で見ますように、彼らの言うところのワインコルクの製造が森林伐採を引き起こし、環境破壊を起こしているというのは実は的外れな議論だったのですが、コルクが原因でワインの品質がかなりの影響を受けるというのは一方では明らかな事実としてあるため、プラスチック栓の製造業者を巻き込んでワインの栓(ストッパー)としてどちらが優れているのかという論争になっていったのです。


コルクの収穫

ここで少しコルクについてみてみましょう。世界最大のコルクの産出国はポルトガルです。世界のワインコルク使用量の半数近くがポルトガルから産出されています。ちなみに2番目の産出国はスペインです。ポルトガルのコルクオークの森林面積は76万ヘクタール、ポルトガルの全森林面積の20%を占めています。また、ポルトガルのコルク産業の経済規模はGNPの3%に達し、ポルトガルの基幹産業のひとつになっています。


コルクオークの寿命は200年を超えると言われています。ワインコルクはじめ、コルクを原料にした製品は切り倒された木から作られるのではなく、コルクオークの樹皮をはがしてそれを原料に作られるのです。樹皮がコルクオークからはじめて採取されるのは樹齢が25年以上になってからです。その後の樹皮の収穫は9年から12年ごとに行われます。したがって一本のコルクの木が植えられて2度目の収穫を迎えるのに35年以上かかるということになります。

ですからこの観点から見ますと、前述のマークスアンドスペンサーやセーフウェーの主張は間違いだったと言うことになります。事実彼らは後に自分たちの言ったことは間違いだったと訂正しています。しかし依然としてワインコルクが中のワインにコルク臭をつけたり、香りを奪ったりすることがあるという問題は残ります。いわゆるコルクテイント(cork taint)といわれる問題です。


コルクテイント(cork taint)の問題

テイントとは何かの成分が作用して食品などがダメージを受け、本来あるべき状態が失われるというような意味です。近年ではコルクが原因でワインの品質が劣化する問題はTCA汚染として議論されています。TCAとは2,4,6trichloroanisole(トリクロロアニソール)という化学物質の略です。

TCAはワインにコルク臭をつけるとされている化学物質で、コルクオーク、ぶどうそのほか、植物に広く存在するフェノール類(phenols)とカビと塩素類が反応して作られ、生きているオークの中でもワインコルクの加工途中でも、また製品として出荷されたあとも増加するといわれています。

塩素類と反応するというのは、ちょうど水道水を塩素で消毒するのと同じようにワインコルクも塩素で洗浄されますが、そのときコルクに付着した残存塩素がフェノール類と反応しTCAを生成するといわれています。事実多くのコルク製造業者が洗浄液を塩素から過酸化水素に切り替えたところ、TCA汚染は劇的に減少したと報告しています。

いずれにしてもこのTCAの存在がワインにダメージを与える、ということがはっきりしてきたわけです。それにともなってワインの栓としてコルクを使うことが果たして最良かどうかという議論が、特に人工コルクメーカーから強く提起されてきたのです。


コルクが原因で起こるワインの品質劣化は相当量あるのか

コルクが原因で、あるべき姿を保っていないワインがどれくらいあるのかというのは推定によりかなりの幅があるようです。その値は全ワインに対して0.5%から10%程度までとさまざまです。コルク生産者たちは数%などというのはとんでもない、せいぜい1%以下だろうと反論しています。

ワインの1割近くがコルクが原因で品質劣化しているというのは多すぎる数字としても、コルク生産者たちも認めるとおり、ある程度のワインはコルクテイントの影響を受けているというのは事実でしょう。しかしコルク業界は、TCAを生成するカビはワインの樽の中やパッケージのダンボール、瓶詰め前のからのワインボトルの中にも存在し、管理の悪いワイナリーではTCAがワインに混入する率はきわめて高いと指摘し、ワイナリーのオペレーションに言及しています。


プラスチック栓はワインの救世主となりうるか

近年コルク栓の問題がいろいろ指摘されるようになってきたのですが、プラスチック栓がその問題点をカバーしうるかというのが注目の集まるところです。実はプラスチックのほうにも問題がないわけではないようです。

一つはコルクに比べて抜きにくいという点です。今ひとつはワインの長期の保存に適するのかどうかです。確かに2年以内に飲まれてしまうワインではうまく機能しているようですが、中には液漏れや酸化も報告されているようです。

コルクを使ったほうがいいのかプラスチックがベターなのかという議論はまだまださまざまな論議があり、欠点の指摘とともに改善もされています。今のところ早い時期に飲まれてしまうワインについてプラスチックを用いるのはさほど問題はないようです。しかし10年、20年という長期にわたって保存され得るワインにプラスチック栓を使うということには慎重論が多いようです。


ワインメーカーとコルク

ワインメーカーにとってコルクというのは非常に悩ましいものといえるかもしれません。コルクに問題があればその1年間ぶどう作りからワイン造りにそれこそ心血を注いだ時間と労力がすべて水の泡と化しかねないからです。TCAの存在がクローズアップされて以来、コルクの製造会社がその責任を問われてワイン生産者から訴えられるという事例が少なからず起こってもいます。

ワインメーカーはぶどうが収穫されたときからワインになってそれが瓶詰めされるまで非常な緊張状態におかれます。ワインに問題がおきないようにいつも細心の注意を払わなければならないからです。その緊張はワインがボトルにつめられ栓がされたときはじめて解かれるのだと思います。ですから自分がつくったワインが、コルクが原因で売り物にならなくなったとわかった時の落胆は察してあまるものがあります。たかがコルク、されどコルクです。

(伊藤嘉浩 2005年7月)



 【関連ページ】

ワインの栓をめぐる問題 
(その1)『
コルクテイント(ブショネ)の問題』
(その3)コルクはワインにとって最良の栓であるのか

ブショネ(コルクテイント)の検知

ワインオープナー(ワインの栓抜き)の重要性
ワイン生産者たちはどんなことに関心を持っているか



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